老後の安心装置


~日本一の福祉資源~


中庭 車いすの故・橋本さんと町長・岩川 趣味その1

ケアタウンの風景



リビングルームの夕方
ケアタウン探検隊 趣味その2


岩川町長就任翌年1992年の鷹巣福祉
8人雑居の特別養護老人ホームの風景


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高齢者安心条例



高齢者安心条例ガイドライン(PDF形式:187KB)
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上乗せサービス


~ケアタウン老健~



岩川時代

入居者80人を抱えるケアタウン老健の支出(運営費)は年約4億5千万円。対する収入(介護報酬+利用者負担)は年約3億5千万円。この差額1億円が町からの出費(実際は町から4億5千万円で受託した形をとる)です。

老健職員の国基準は入居者3人に対して介護職(看護含む)1人。ケアタウン老健は入居者が80人なので、介護職が27人いれば基準はみたします。しかし、基準どおりの職員数では入居者1人ひとりに合った世話はできません。夜間は50対1体制という恐ろしい事態もあり得ます。

入居者は我慢したり、恥ずかしい思いをしたり、屈辱的な目にあったりもするでしょう。職員は入居者相手に機械的に接することで精一杯です。事故が怖いから「縛る」「閉じ込める」の拘束も起こりえます、しかし、これは職員や施設の責任ではありません。人手を厚くしようにも、介護保険制度の枠内では人手に限界があるのです。

そこで岩川時代の鷹巣町は、町民へのスペシャルサービス分として、老健に1億円を補助してきました。これで、ケアタウン老健は国基準の2倍近い職員(入居者1.5人に対して介護職1人)を確保できました。その人手増加分がだいたい1億円なのです。

要介護高齢者の尊厳を大切にしたければ厚い人手は絶対に必要です。鷹巣町の一般会計予算は約90億円ですから、予算の1%強を投入することによって、常時80人分の『人間らしい生活』を確保することができたことになります。

町からの福祉スペシャルサービスは、ケアタウン老健だけではありませんでした。在宅介護のホームヘルプ、デイサービス、ショートステイ、グループホーム等々、介護認定を受けた町内1,000人以上の高齢者とそのご家族を人間的に支えるために使われてきました。

岸部時代

「身の丈福祉」を唱えた岸部町長は、これまで築き上げてきた「鷹巣福祉」に大ナタを振るい始めました。

 真っ先に手を付けたのが、(財)たかのす福祉公社の補助金削減です。これは、「十分な人手」の確保など不要という意味であり、合わせて、個室を「雑居部屋」に改築することも検討されました。

次いで矢継ぎ早に、ミニデイサービス、紙オムツ支給を廃止。デイサービスセンターの建設も中止、商店街に開設されていた訪問看護ステーションの移転も決定しました。

たかのす福祉公社は町の委託を受けてグループホームを運営していましたが、これも廃止が決まりました。一方で、岸部町長は新たに鷹巣町内のアパート業者が申請したグループホームの開設を認め、利用者家族に対して、そちらに移るように自ら説得を始めました。これに反発した家族は民間のグループホームに移ることを拒否し、「家族会」を結成して抵抗を続けました。結局、利用者7人全員が「ケアタウンたかのす」に入居することで事なきを得ました。

介護保険がスタートした年、鷹巣町では介護保険が定める介護サービスの上限を上回る需要があったので、鷹巣町はその分を「上乗せサービス」として、全ての利用者が全額1割負担で利用できるようにしました。しかし、この「上乗せサービス」も廃止され、利用者は全額自己負担となりました。その結果、夜間の訪問介護利用件数が激減し、「家族介護の時代」に逆戻りしました。

こうして、岸部町政は福祉を切り捨てながら、4町合併に突き進んだのです。

周辺自治体との合併で北秋田市となり岸部市長が誕生したのですが、それにより、旧鷹巣町が独自に進めたオリジナルな福祉政策は完全に消滅しました。

旧鷹巣町が低所得者救済策として決定した介護保険料率の低減も廃止されて、低所得者の介護保険料率が引き上げられました。つまり、これまで第一段階の保険料率は0.4であったのが、合併によって周辺3町と同じ0.5に引き上げられたのです。更に、旧鷹巣町の誇りとも言える「鷹巣町高齢者安心条例」も廃止されました。岸部市長は議会で「この条例があることによって介護職員が委縮し、いい介護ができなくなる」と、言いました。

「鷹巣福祉」切り捨ての仕上げは、(財)たかのす福祉公社の解体でした。それは、指定管理者制度を悪用する形で進められました。北秋田市は「ケアタウンたかのす」の運営を指定管理者に委ねることを決めて、管理者を公募しました。指定管理者選考は、ルールが棚上げされての、なりふり構わないものでした。

指定管理者を巡る事実上の競争は、かつて、岸部町長が役員の総入れ替えをした旧鷹巣町社協と(財)たかのす福祉公社との間で行われました。

「北秋田市指定管理者条例」では、申請者について①「申請資格を有するものに限ること」、②「業務計画書に沿った管理を安定して行う人員、資産その他の能力を有していること」と明記されています。①においては老人保健施設運営資格を、②においては老人保健施設運営に必要な基準人員の確保を、それぞれ求めたものです。

しかしながら、選考結果は①、②の資格を有しない北秋田市社協(旧鷹巣町社協)に決まりました。北秋田市社協は指定管理者に指定された後で資格申請を行い、(財)たかのす福祉公社の職員を採用することで「ケアタウンたかのす」の運営を始めるという、泥縄ぶりでした。

こうして、「鷹巣福祉」を支える最後の砦だった(財)たかのす福祉公社も、事実上、消え去ることになりました。